Tシャツとジーンズで二十年やってきた自分が、約半年で「抜けた」三日の話を書く。土曜は渋谷、日曜は秋葉原、月曜は近所の映画館。場所も予定もまるで違うのに、三日分の服はぜんぶ、徒歩二十分圏内で買えた。ユニクロとGUと無印。それ以上のものは要らなかった。本稿で名を挙げる十四品はすべて、自分が買って実使用したものに限った──正確には2026年1月〜2月に購入し、本稿執筆の6月末まで、約5〜6か月の経時をまとめて「半年」と呼ぶ記録である。薄汚れた、飴色が出始めた、ほつれた──その経時を、各品に一行ずつ添えた。
大事なことを先に書く。「Tシャツとジーンズ」をやめる必要はない。本稿の Day3 でも、無印のデニムストレートを履き続けている。やったのは「捨てた」ではなく「重ねた」だ。順番だけ、ちょっと変えた。
本来「服を変える前にやればよかったこと」(髪・眉・肌・唇)を先に書くべきだったが、後回しにした順序の取り違えは、本稿の「仕込み」章にまとめてある。
№ 01.1渋谷を歩く土曜 ── オックスフォードシャツとチノと白スニーカー
土曜は旧友と渋谷で昼飯だった。二十年なら迷わず黒Tにジーンズで行ったところを、その日は「ユニクロのオックスフォードシャツに、感動パンツ(=ユニクロのチノ)を合わせる」というだけのことをした。オックスフォードシャツとチノが合うのは、生地の目の粗さが近いからだ──Tシャツのジャージ素材と違い、両方とも織り目の表情があり、休日のラフさを保ったまま「キレイめ寄り」の印象を作れる。シャツはアイロンが要らない、もしくは適当でいい種類のものを選んだ。チノはほぼジーンズと同じ感覚で履ける。
足元は、思い切って白いスニーカーにした。これは無印にもGUにもなかったので、Amazonで定番のキャンバスを買った。汚れたら洗えばいい、と割り切れる安心感が、まず一番大きい買い物だった。
このコーデの主役 ── 公式で買えるもの
- UNIQLOオックスフォードシャツ(ボタンダウン)
- UNIQLO感動パンツ(チノ)
周辺の小物 ── 余白の注記として
渋谷スクランブルの横、地下のチェーン珈琲店で旧友と会った。会計のとき、店員さんは「変わらないなあ」とは言わなかった。たぶん「変わった」とも気づかなかっただろう。十分だった。気づかれない程度の変化が、たぶん一番怖くない。
№ 01.2コミケ準備で秋葉原の日曜 ── ワイドパンツとドライT、肩から下ろすカバン
日曜は秋葉原に新刊と電子部品を買いに行った。ここは間違いなくリュックが強い土地で、地元では「電気街仕様」と呼ばれる戦闘服(=黒T+ジーンズ+リュック)がある。それは否定しないが、その日は試しに、リュックを家に置いてみた。
下はGUのワイドフィットイージーパンツ。上はGUのドライメッシュT。初回、何も考えずに一番上の棚にあったTを掴んだら、家で広げた時に首回りが少しよれていた。試着室で気づくべきだったのに、何年もまっとうに服を選ばないと、こういう一歩目でつまずく。次の日に同じ売り場に戻って、首のリブがしっかりしている方に取り替えた──たった九百九十円のTシャツでも、その一手間で見え方が違った。汗をかいても気にならない素材で、夏の秋葉原で生き延びる。
このコーデの主役 ── 公式で買えるもの
周辺の小物 ── 余白の注記として
ラジオ会館の三階、同人ショップの狭い通路で会計列が伸びていた。レジで知らない人にぶつかった。「すみません」と言って通り過ぎて、相手は何も言わなかった。それも十分だった。誰の視界にも入らないままだった二十年が、ぎりぎり視界に入って、すぐ流される側に来ただけのことだ。
№ 01.3アニメ映画館の月曜 ── スウェットとデニムと、グレーのスニーカー
月曜は有給を取った。早朝の劇場でアニメ映画を観て、そのまま地元の本屋で原作のコミックを買い、夜は親と回転寿司に行く、そういう一日だった。一番油断してよくて、一番「ふだん着」が出る日。
上は無印良品のオーガニックコットン スウェットシャツ。これだけは、二十年来の黒Tを白い無地スウェットに置き換えた、というだけのことだった。下は無印のデニム ストレートパンツ。ちなみに、これも「ジーンズ」だ。完全には抜けなかった。抜けなくていい。
このコーデの主役 ── 公式で買えるもの
- 無印良品オーガニックコットン スウェットシャツ
- 無印良品デニム ストレートパンツ
周辺の小物 ── 余白の注記として
地元の旧い映画館は座席が古く、肩肘が当たる距離感だった。暗がりで気づいたのは、自分が映画に集中できていたことだった。服が気になることが減ると、自由になる時間が増える。それで十分だった。
№ 01.4三日分の「仕込み」 ── 服が変わる前にやるべきだったこと
肌・髪・眉・唇の話だ。服は一回買えば三日着られるが、肌と髪と眉と唇は毎朝の話で、しかも誰でも今夜から始められる。ここを抜くと服を着替えても「Tシャツとジーンズの人が、シャツを着ている」にしかならない。順序を間違えて服から手を付けたぶん、本来は Day1 の前に置きたい章である。
ご留意 以下の化粧水・ヘアオイル・リップ・眉シェーバーは、使用感に個人差があります。肌の悩み・かぶれ・特定の症状がある場合は、自己判断せず皮膚科医・薬剤師等の専門家にご相談ください。記載は著者個人の半年使用の感想であり、効能効果を保証するものではありません。
№ 01.5失敗した三つ ── 二十年Tシャツの自分目線で
一、 GUのビッグロゴ プルパーカー(2026年2月、税込2,490円で購入)。
「ストリート」に憧れたが、二十年Tシャツの肩幅と顔つきで着ると、コスプレ感がきつい。これは半年経った今でも、クローゼットの下段でじっとしている。あえてここに商品名は載せるが、リンクは張らない──同じ買い物を他人にさせないために。教訓:いきなり方向を変えない、無地から半年。
二、 H&Mのスキニーデニム(2026年1月、税込2,999円で購入)。
履けた、けれど、しゃがめなかった。コミケの床に座って同人誌を選ぶ動作と、相性が極端に悪い。一度床に座って、立ち上がる時に膝裏が引きつった。これも商品名は出すが、リンクは張らない。教訓:自分の動きを変えてまで履く服は、ふだん着ではない。
三、 Amazonノーブランドの合皮レースアップシューズ(2026年1月、税込3,580円で購入)。
二回履いて靴擦れで諦めた。両足のかかとに絆創膏を貼っても痛みが消えず、三回目を履く気にならなかった。スニーカーで半年走ってから革に行くべきだった。商品名は伏せる、店子個別の話ではなく「価格帯と素材の組み合わせ」の話だからだ。教訓:足元は、痛くないことが先。見た目はその後。
この三つは恥ずかしい、けれど恥ずかしいまま書いておく。誰かが同じ買い物をしないために。失敗章にだけアフィリエイトを張らないのは、編集方針三号「自分が買って、半年使ったものしか書かない」と矛盾しないためだ。半年使えなかったものは、勧めない。
№ 01.6半年後のクローゼット ── 言語化で残す
14品を並べて半年。今のクローゼットを言葉で描き起こすと、左側のハンガーには白いオックスフォードシャツが一枚、ベージュのチノが一本、無印の白スウェット、GUのドライメッシュT(白と黒)が二枚、無印のデニムストレートが一本。右の引き出しを開けると、コンバースの白とニューバランス996のグレー、ヘインズのソックス三足組とBEEFY-Tの二枚組。失敗したロゴパーカは下段で畳まれている。半年前は黒T七枚と毛玉のついたパーカと洗いざらしのジーンズ二本だった棚が、これだけ変わった。「変わった」けれど「捨てた」ではない。黒Tは三枚に減ってまだそこにある。
№ 01.7次の章へ ── 髪と眉と肌の、最小単位
三日間の服装と、十四の道具と、三つの失敗と、半年後のクローゼット。これが第一章の目次だ。次の章は、服を変える前にやればよかったと半年経って思う、髪と眉と肌の話を構想している。仕上がり次第、目次に追記する。
もしこの一篇が、二十年Tシャツとジーンズだった誰かの、半年後の本棚に残っていたら嬉しい。編集方針についてとこの巻の編集方針もあわせて読んでほしい。