クローゼットを開ければ、黒いTシャツが七枚、洗いざらしのジーンズが二本、そして毛玉のついたパーカが一着。コミケに行く服も、秋葉原で本を買う服も、近所のスーパーに行く服も、全部おなじだった。誰にも何も言われない代わりに、誰の視界にも入らない二十年だった。
転機は半年前、地元の本屋でかつての同級生に再会した瞬間だった。こちらは平台の前で「鋼の錬金術師」の文庫版の続きを抱えていて、向こうはレジ前で奥さんと子供の絵本を選んでいた。「変わらないなあ」と笑われた、その「変わらない」が、ちょっとだけ痛かった。漫画もアニメもゲームも、二十年で確実に「変わった」のに、自分の服だけが止まっていた。
翌週、近所のユニクロに入った。GUにも、無印にも入った。ブランドの呪文も、季節のトレンドも、何ひとつ知らないままだった。けれど、半年経って気づいた──抜けるのに必要だったのは、たぶん値段じゃなく、順番だった。
この巻に書くのは、その順番である。失敗も、後悔も、買い直した分も含めて。なお本サイトで「半年」と表記しているのは、実購入(2026年1月〜2月)から本稿執筆(6月末)までの約5〜6か月の経時を、まとめて「半年」と呼んでいる略称である。各品の購入月は本文中に明記している。